桑田真澄の野球は「心」の野球

だてBLOG編集長「だておとこ」

2007年08月15日 12:18

今日朝一で入ってきたニュース。


米大リーグ、パイレーツに所属する桑田真澄投手の戦力外通告が、
試合前に球団より発表されました。




野球の話を書いてしまうと長くなるので、
ブログでは極力アップをしないようにしてきたけど今日は書きます。
書かせてもらいます。




「一番好きなプロ野球選手は?」


「尊敬する人は?」


「会って話せるとしたら誰を選ぶ?」






といった類の質問に対し私が即座に名前を挙げるのは桑田真澄です。



桑田に関しては、高校野球のPL学園時代からずっと見てきましたが、
はじめは一野球選手くらいにしか感じず、むしろ清原和博(現オリックス)の豪傑さに夢中でした。



桑田と言うと、巨人入団の経緯や度重なるスキャンダル(これもかなり誤解や屈折がある)
の影響で、ダーティイメージが付きまとい、選手の中でも浮いている存在でした。



事実、藤田監督(故人)が復帰した1989年、見事日本一に輝いた優勝祝賀パーティで、
中畑や原ら当時の巨人の主力選手がビールを掛け合って狂喜乱舞している中、桑田だけが
ポツンと1人だけで自らの頭にビールをかけていた映像が今でも強烈な印象として残っています。

14歳のだて男少年は「あ、桑田って友達いないんだー」としみじみ感じたものです。



私はちょっとしたプロ野球マニアで、
現代の野球だけにあらず戦後の野球まで遡って、過去の様々な選手の記録や
成績、伝記などの関連書籍をむさぼり読んでいました。
お陰で自分の親以上の世代の人とでも、
野球の話題に関しては同じ時代を生きてきたかの様に話すことが出来ます。



その自分が、「これほどまで・・・!」と呆れるほど、野球に対して真摯に取り組み、
信念を持って自分の人生を貫いて生きているのが桑田真澄なのです。



桑田は野球に対して絶対に嘘をつかないし逃げない。負けない。
自分の人生、日常の全てを野球に絡めて生きているのですが、
野球だけではなく、人間としてもその考え取組み生きっぷりには
尊敬の念を抱いてしまいます。



「今日は炭水化物を摂取する日だから」



これは20歳の頃、
登板前ということですぐにエネルギーになるパスタとおにぎりを口にしながら
発した桑田のセリフ。
彼は中学の頃から、小さい自分の体を最大限生かせる様、栄養バランスを考え抜いて、
「食べたいものを食べたいとき」ではなく、
「力になるものを一番効果が出るタイミング」で[摂取]しているのです。



食べたいものも食べず、ましてや口にするものを[摂取する]
なんて言うハタチの若者に会ったことありますか?
わたしは聞いたこともありません。



はじめは興味本位やもの珍しさで見ていたのですが、
次第にそのストイックさというか鬼気迫る取組みに引き込まれるようになりました。
そして10年前に石田雄太著「桑田真澄 ピッチャーズバイブル」を読んで、
『人間:桑田真澄』 を知りました。



生い立ちや生活環境、常につきまとう劣等感、甲子園での栄光、
大人に翻弄されるプロ野球入団・・・。



桑田は、怪我やトラブルなど起こりうる全ての逆境に対して、
絶対に屈せず諦めない精神力があり、どんな予期せぬことが起きても、
「常に今出来ることのベストを尽くす」気持ちの強さで様々なハードルをクリアしてきました。



巨人を解雇された桑田は今年3月、
20歳の頃から描いていた憧れのメジャー昇格まであと一歩と迫った試合で、
不慮の怪我にあい靭帯を断裂しました。



仮に自分だったら



「何故俺が?いったい何をした?ここまで来て普通起こるかこんなこと?」



となります。



強い人間でも、



「39歳でここまでよくやった」



と自分で自分に区切りをつけるくらいでしょう。
でも桑田は諦めませんでした。



その後1人アメリカで続いたどん底のリハビリ生活も、
朝、玄関を出る前に「今日もやったるで!」と気合一発乗り切り、
2ヵ月後に見事メジャー昇格を果たしました。
大人になってからはどんなにつらいことが起きても涙を見せなかった39歳のオールドルーキーが
初めて見せた涙は、メジャー昇格後に背番号18のユニフォームを渡された時だそうです。



桑田には若い頃たてた人生設計があるらしく、
それには「怪我による手術で1年間の休養」と書かれており、
1年以上を棒に振った1996年の右肘手術まである程度予測していた様です。
その人生設計に、今回のメジャー解雇は書かれていたのでしょうか。



もう十分だと思います。



ゆっくり休みなよ桑田ー



好きなワインを飲んでピアノ弾いて子供達とゆっくりしなよー



日本の終戦記念日でもある8月15日は、
桑田にとっても終戦を決断する1日になるのではないでしょうか。



追伸
現在発売のSportiva(スポルティーバ)
9月号にくしくも「復活」というテーマで桑田の特集が載っています。


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